彼の白い手に映える鮮やかな赤いリボン。

可愛らしいピンクの包装紙。




「えーっと…」




私はその六面体の包みと、深月さんを見比べた。

釣り目の大きな瞳が真っ直ぐこちらを見据えている。
なんだ?

私が、これを受け取ればいいのかな?




戸惑っているのが分かったのか、彼は念を押すように「受け取ってください」と呟いた。

朝からなんだ?

今まで世話した領収書とかまさかそういう類の…。




ベビーシッター!!



ベビーシッター感覚だったのかまさか…!

静寂に包まれた(私のみ)重い空気に呑み込まれそうになりながらも、ゆっくり両手を差し出ししずしずとそれを手に取る。



あれ!意外と重い!



どんだけ沢山領収書入ってんのさ!
怖い!請求額が怖い


恐怖に震えながら深月さんを見上げると彼は何事もなかったのように箸を持ち上げ、優雅な朝食を再開する。




「あっ…と、これは…」




怖いけど一応聞かなければ。

チラリと目だけで私を見た彼はすぐに視線を白米に戻す。


「従来女性から男性に送るものですが…」




え!
まぁ…確かにデートに行った時金は男が払うみたいな習慣はあるけども!
流石に領収書は送らないよね!



「海外では男性から送る習慣もあるようですし」



え!そうなの?
海外怖い!




「貴方を起こすのも後1ヶ月ほどしか出来ませんので…」




今のうちに請求しておこうと!!




「贈り物をするには良い機会かと思いまして」





冥土の贈り物…!





「目覚まし時計です」




「目が覚めるような金額…!!…、目覚まし時計?」




妙なことを口走った私に顔を一瞬だけ歪めた深月さんは、渡した包みを開けるように促した。

私はなんだか糸を張り詰めたような気持ちでリボンに手をかける。


抜けるようにほどけたリボンで開いた包みの中身はダンボール製の箱。

中を覗くように開けると、可愛らしい花柄のアナログ時計が入っていた。