目の前に倒れている警備員達を睨み下ろしながら、僕は隣でスカートの砂を払う女に視線を移した。

小さい顔に大きな目、バサバサと長い睫毛に長いウェーブの髪。


鈴といつも一緒に居る女で確か、要冬真親衛隊だか討伐隊だが管理局だか何だかよく判らない組織のトップの人間だ。

まぁあまりにもあのクソ生徒会長とそれを取り巻くウザったい女共が珍しくて何となく覚えているだけだが。



「お二人が心配ですわ」




ポツリと遠い目をして女が呟いた。
まぁ、あの俺様生徒会長と暴れん坊将軍鈴なら問題ないだろ。


「葵、さんって、やはりお強いんですね」



躊躇いがちな声に顔を上げれば、嬉しそうに顔を輝かせた女が両手を組んでズィっと一歩こちらに近付いてきたのが分かった。


「当然でしょ?君も喧嘩強いんだ」



「いえ、私はまだまだですわ」


照れた顔で遠慮がちに女は笑った。
確かに、先程観察した限りでは鈴よりは下、というよりは規則性のない僕らに対して型のはまったものに見える。



「そういえばさ、君、あの二人ムカつかないの?」



何となく興味がわいた質問だった。
組織に所属しているくらいだ、僕が彼女だったらムカつく。
というか今僕自身、“召使い”扱いされたことを手伝って最高に腹が立っている、あの要冬真に。



「いえ!私は…お二人を愛していますので、その方達が結ばれるのは本望ですわ」




目を細め、自分の事のように笑う女は何故か幸せそうだ。


「ふーん、変なの。僕が君なら鈴を八つ裂きにしてるよ」



お嬢様には過激過ぎたのか、彼女はこぼれ落ちそうな眼球をさらに見開いて数回まばたきを繰り返した。


「とんでもない!どちらかと言えば冬真様を八つ裂きにしたかった…」



「…、は?」



「いえ!ダメですよねそんな事…鈴夏さんの幸せは私の幸せ…」



まさか。


「なに、鈴の事好きなの?」


「あらやだ恥ずかしい!葵さんと私はライバルですわね!ラ・イ・バ・ル」



鈴…、お前って変な奴に好かれるな。


僕?


僕は普通でしょ?