――…もうそろそろやな



沢山の大人達がざわめく会場。
俺としては鈴夏を助ける側に回りたかったが、それは生徒会長に譲るとして。



『明日、俺に協力してほしい』


思惑通りというか、なんというか、あの俺様生徒会長からラブコールがあったのは真夜中の12時過ぎ。
見知らぬ番号からの電話に、通話ボタンを押して耳を傾けると一呼吸おいた沈黙の後聞こえてきたのは『俺だ』と言うイマイチ不服そうな声。


誰だか一瞬で分かったのと、詐欺師のような電話の掛け方に吹き出しそうになったが、笑えば怒られること必至だったので何とかこらえた。

最近は“オレオレ詐欺”と言うのが流行っているので、初めて電話を掛ける相手には名前を名乗った方がいいと忠告すると、彼は鼻で笑った後楽しそうにこう言った。



『俺だって判らないわけないから名乗る必要はねぇだろ』



あぁさいですか。



俺の役目は、万が一生徒会長率いる召使い達(こう呼んだら葵に跳び蹴りされた)が鈴夏奪回に失敗した場合、次の行動に移るために会場を見張る役というわけ。



スーツ姿、二人の友人代表として呼ばれたという体でここに座っている。



しかし、よく俺で承諾したもんやな。副会長さんも。



やがて時刻は11時を回り、壇上近くの扉が開き数人の人が入場してくる。
予定通り始まるようだ。


ってことはなにか?失敗したか?



俺は若干ソワソワしながらその扉を眺めていると、白いスーツ姿の副会長さんが入ってきた。


――…新プロジェクト発表がメインで婚約発表もついでにって聞いとったけど、あの正装じゃあ簡易結婚式みたいなもんやな



どうしても、形上結婚にこぎつけたいらしい大人達のビジネス戦略が見て取れる。



――…アホくさ



改めて、引いた所で我に返り、続けて入ってくるだろう鈴夏を待ったが、彼の後に続く者は誰もいない。


壇上の二人分の席で埋まっているのは、一つだけ。
隣に彼の将来の奥さんが座ると思っていただろう会場のゲスト達はざわめき始めている。

しかし、スタッフも例外ではない。