「だよね!じゃないと生徒会入れないもんねーあたしもきらい」


「え?きらいなの!?」


意外…というわけではないが、彼女達も奴に指名された訳だから仲がいいと思っていた。

海ちゃんは勢い良く頭を上げてソファに正座する。
顎が彼女の頭にぶつかりそうになり、私は慌てて頭を反り返すように上へあげた。




危ない…、舌噛むところだった。




彼女はというと、仲間意識でも生まれたかのようなキラキラした瞳でこちらに熱視線をおくっている。


「俺と悠は、会長の指名ではないですよ」


「え!そうなの?」


「二年生は通常通り推薦と立候補の投票で決まりました。三年生の指名制は、会長の要望です。だから三年生は女性が先輩一人なんですよ。会長が男なら副会長が女、またはその逆が本来ね校則ですからね」





「へぇ、なんか複雑…よくわからん。じゃあ二人とも特別アイツと仲良いわけじゃないんだ」



「俺は生徒会に入るまで面識はなかったですが、悠は会長と幼なじみですね」



「そーなの!幼なじみのくせに保護者みたいなんだよ~トーマのやつ!」



黙って話を聞いていた海ちゃんは、“幼なじみ”というキーワードに反応して堰を切ったように話し出した。



「あたしが男の子と遊びに行くって言うと怒るし、ちょーっと授業さぼってると何故かバレて呼びにくるし、ラブレター茶化しただけで頭叩くし!おまけにトーマが怖いからって男の子が近付かなくなって…キー!」


初めは鼻息を荒げていた彼女だが、どんな辛い思い出があったのかどんどん速度は落ちていき終いにはソファの背もたれを拳で叩き始めた。



「おおお、なんか知らないが…取り乱さないで!」




ていうか、アイツって海ちゃんのこと…。




「キー!悔しい!自由になりたい!」




好きなのか…?





ユキ君は顔をしかめてから、思い出したように鞄から耳栓を取り出し自分の耳に装着してまた作業を開始した。



「いつもこんな感じですから、耳栓は基本装備です」