「…?」


「いや!やっぱり一番風呂は年上でお疲れのブラックさんかと思いまして…」



怖い!
無言で見下ろされてる!!
怒ってる?
俺に気を使うとメスが飛ぶぜ的な?すいませんブラック・ジャック先輩!


しばらく固まっていたブラックは、体ごと向き直りもう一番座り直した。
私のすぐ隣、座布団も使わず畳に直に。


「鈴夏様」



「ハィィ!」



「お嬢様が、下の者に気を使ってはいけません。いくら私が年上でも、それはやってはいけないことなのです。堂々と、皆の前に立ち毅然とした態度で。分かりますか?」



その言葉に、ふと脳裏を過ぎったのは要冬真の後ろ影だった。
毅然とした態度。

堂々とした身のこなし。


将来要財閥を背負っていく18歳の小さな大人。
その彼は、今学校の顔とも言える生徒会長。
梶谷学園を纏めるトップ。


あれは、当然の態度なんだ。


今更ながら納得した。



しかしだ。
私は、あいつとは違う。
子分だって昔から欲しくなかった、欲しいのは、仲間。

気兼ねなく話せる友達。




「そんなお嬢様知らん」




私はそもそもお嬢様じゃない。
睨み付けるようにブラックを見上げたが、怯む様子も縦に首を振る様子もない。



「じゃあ命令ね!先に風呂に入れクソ執事!」




私がそういい放つと、小さなインターバルの後クソ執事は仕方なしに了解して、広間から出て行った。



なんで命令だと素直に聞くのよ…、執事ってそんなに従順じゃなきゃいけないわけ?


戸が閉まる音を耳だけで見送って、私はヒジキに手を付ける。


――…ブラック人間化計画…!


決して人類補完計画のパクリではない。

とりあえず食器を片して、それから…、背中を流す!のは流石に私が恥ずかしい!

あ、そういえばブラックってば風呂の後も何故か仕事モードだから、リラックスモードに切り替えよう!


うちの親父を見習え!



仕事の後は酒呑んで横になってお笑いを見ているチョーぐうたらモードを!



「見てなさいブラック!私が人間にしてやるわフハハハハ」