“授業参観?”


“授業参観かしら?”





授業中にも関わらず教室中から飛び交う声と好奇な目線。
おいおまえら授業を真面目に受けろ!
前を向けそして振り返るな永遠に!


私は目で前方の席ほぼ全てを威圧しながらも、後ろに立つ人の微かな気配に恐る恐る目だけで振り返る。




――…授業参観!?




とりあえず分かっていてもツッコミを入れないと気が済まない。

ブラックは何故か後ろに立ち授業を参観…というかどちらかというと私のノートをガン見してるわけで。


ノートの隅で繰り広げられたハルと私の言い争いや、デカデカと書かれた落書き。


腰を曲げて机の上を覗き込む様は学校の先生だ。
しかも、気に入らないなら注意すればいいのに、無言で体勢を戻して今度は黒板を眺めている。

あの、釣り目の大きな目で鋭く。



「はい、じゃあ今日はここまでなー来週小テストだから」




ガッデム!




テストかよ!


いやでも午前中の授業終わったつまり、授業参観終わった!
ガタガタとなる椅子の音に合わせて私も立ち上がり後ろを振り返ると、あの無表情が何も言いたくなさそうな感情のない目で此方を見ていた。



「…!!」



見られてる!


至近距離すぎて怖い。





「鈴夏様」



「は…、はい」



「今日私がここに来たのは、住所変更の手続きをしにきたからです」


「引っ越しおめでとー」



よく解らんが、彼は引っ越すらしい。
適当に激励を送ると、おめでとございます。と丁寧な言葉が返ってくる。
え?なんか新しいタイプ!!
扱い辛い!


ここは素直に“ありがとう”を言うか、投げやりな私の言葉に何かツッコむ所だろう!


「では。私は職員室の方へ住所変更の手続きを行ってまいりますので鈴夏様は昼食をお取りください」


音もなくブラックは教室から出て行った。
扉が閉まるのを確認して溜め息を付くと、隣で様子を見ていたハルが私の横に立つ。



「よくわかんないけど、あの執事凄そうだねー」


「え、意味がわからんどういうこと?」