衝撃的な昼休みからうって変わって静かな授業風景。

私はチョークで描かれる白い線を目で追いながら、欠伸をした。

退屈だ。
物理は嫌い。




“これで、正式な生徒会ですね。鈴夏さん”




久遠寺秋斗の紳士的で腹の立つほど仮面を被った笑顔が鮮明に思い浮かぶ。


暇というのは恐ろしいものだ。
思い出す必要のない、嫌な事がここぞとばかりに脳内を駆け巡る。


私の字で書いていない私の名前の書かれた書類が通ってたまるものか。

あんなの無視だ。無視。



私は颯爽と帰るために教科書を鞄に仕舞い出した。


授業は、あと数分もしないうちに終わる。

ソワソワと、私は教壇に立つ教師を通り越して黒板の上に置かれた電波時計を見ていた。

秒針を、ジッと。



やがて急かすように見つめていたそれが、丁度天辺を指す。

チャイムと、教師の終わりの合図を聞いてすかさず立ち上がり適当な挨拶をしてから鞄を持った瞬間だ。


「あーリン待って!おれも行く」



what?



呼び止められる理由が思い付かず、私が戸惑っているとハルはしっかりとした口調で言い放った。


「生徒会室行くんでしょ?」


「いやいやいやいや、行かないからね。通り過ぎもしないから、昇降口に直行してランニングしながら帰るから。家に」


「昇降口行くには生徒会室の前通らなきゃいけないよー!」


「遠回りするから。二階から六階に上がってから降りるくらいの壮大な遠回りをするから」


「えーめんどい」

「君は直行すればいいよ」


「駄目だよ、リンも来ないと」


「知らん、大体何の用であんな所いくのさ」



「えー!今日生徒会の集まりの日だもん!」


「は?」



「おれ会計!」



「え?」



「いっくよー!!」



「いやぁぁぁあ!」