「いや、すまん!鈴がどこぞの馬の骨を連れてきたかと…!まさか恐竜の骨とは」
「なにその例え」
久しぶりの我が家。
混雑した店内のカウンターに座る私と要冬真。
先程と違う所は、要冬真が頭から塩を被って塩まみれになっているということだ。
「ご、ごめん…」
「いや、別にいい。突然来たので驚くのは無理ないかと」
私が座ったまま頭を下げると、彼からは意外な言葉が返ってきた。
不安げにこちらを見ていた親父にも外交スマイルを放ち、興味津々に店内を見回す。
「なんだい、坊ちゃんラーメン屋ははじめてかい」
親父立ち直り早っ!
「はい」
「ちょっと待ってろ」
うざったい笑顔を浮かべて、親父は厨房に入っていった。
相変わらずの手書きメニュー表に、赤いテーブル。
金白村内でも人気のラーメン屋・ラーメン仁東、夕方は仕事帰りのサラリーマンや家族連れで賑わう。
転校する前は私が店を手伝っていた。
混雑する時間帯は二人じゃないと回せないからだ。
んで、私が居なくなってさぞかし大変だろうと思ってたら…。
「へい、水二つ!!!」
コップの中の水が乱暴に揺れ、テーブルの上に大きな音を立てて置かれた。
「マサ…、あんたも謝んなさい」
「だって姐さん!姐さんがどこぞの馬の糞なんか連れてくるから…!」
「骨じゃボケェェェ!」
「あぁ!久しぶりの拳ィィ!」
元はといえば、こいつが原因だ。
ちょうど夕飯時だから、うちのラーメン屋でご飯を食べようと提案すると、要冬真は嬉しそうに目を細めた。
『ここは初めてのもんばかりだな』
純粋に喜ぶその笑顔にたじろぎながらも、店内は汚い事を先に断って暖簾をくぐって引き戸を引いた。
『いらっ…、あー!姐さん!!』
『あれ…、マサ…?なんで』
なんてタイムリー。
先程話題の中心となっていた大貫雅則が、白いエプロンを腰に巻き、白いタオルを頭に巻いて立っている。
『姐さんの帰りを、俺は待ってたんすよ!ここでラーメン屋の修行をしながら待ち続…』