なんとも失礼な発言をしながら、要冬真はゆっくりこちらへやってきて目の前の建物を見上げる。


私はオートメイルか!
と突っ込んでも解らないだろうから黙って学校へ視線を投げた。

所々割れたコンクリートに、背の低い引き出し型の門扉は私の肩程の高さしかない。
どう考えても容易に飛び越えられるがきっちり施錠されている。

無駄な足掻き。


「金白第一高校…」



ヤツがポツリと呟いた。
はめ込まれた青銅の看板をジッと見つめている。


どうせ小さいとか、失礼な事言うんだろうなと彼が口を開くのを待っていると、私を見て一言。



「第一ってことは…第二もあるんだよな」



「…、はい?」



文字通り目が点になった私を無視して、要冬真は難しそうに腕を組む。


「このサイズの建物を複数個作るなら、大きいモノを一個の方がよくないか?“村”って言うくらいだから、そんなに面積広くないだろ」



「いや、あの…」



痛い所を突かれた。
それは金白村7不思議の一つとしても有名な話で、私自身も真相を知らない。



「高校はこれ一つ…」




「じゃあ“第一”って付ける意味ねーじゃねーか」



「あ、はいその通りなんですが…」



なんで私が責められなきゃいけないの!!
純粋な疑問なのだろうが、何故か警察官に尋問をされているような気分になり言葉に詰まる。
私が知りたいわ!んなもん!


と、言いたい!



しかし今のこの状況、さながらバスガイドと旅行客!
私が妙な事を口走ろうものならお客様満足度5パーセント!!
よくわからぬ使命感から、完全に追いつめられた私は背筋を出来るだけ伸ばして、サッと指先を揃えて学校を指す。


「えー、こちら金白村7不思議の一つでございまして、詳細は不明であります。ただ何か謎があるのではないかと、金白村におります名探偵が調査中でございます」


後半は、丸々嘘だ。



「へぇー、小説みてぇだな」



口元を微かに緩めて、要冬真は嬉しそうに微笑んだ。

喜んでくださった!!!



「ささ、次の場所に移動しますよ」