「“生徒会役員正式任命書”…?」

「うん、形式上会長が指名した事を“承諾”するのに必要なんだってさ」


「拒否権の施行は?」


「駄目っしょー!もう掲示板に張り出されてたし!」


掲示板って何だろう。
私は軽く青ざめた。
どうやら奴は公の場で発表することで逃げ道を奪い、是が非でも自分の奴隷にする気らしい。


「ということは…この刺さるような視線はそのせい?」



「あー、とうまは学校に親衛隊とか色々あるらしいから」



授業は当に始まっていた。
しかし私とハルは一番後ろの席をいいことに会話を続けている。
親衛隊か。

想定内だが、その後に続く“色々”ってなんだ。

私が次何を聞こうか悩んでいると、彼は自分のノートに“とうま”と書き、その周りに“親衛隊”、“討伐隊”、“管理局”と三つ書き足した。
三つの団体が要冬真を取り囲む図が出来上がり、私は説明を促すようにハルを見やる。


「つまりこの三つが均衡を保ちつつ、とうまを守ってる?」


「?なんで疑問符?」


「だって、とうま守られるってガラじゃなくね?」


「確かに」



火傷どころか、致命傷を負わせそうな図体の癖に守ってもらうなんて生意気だ。
実際私は掠る程度関わっただけなのに気分は意識不明の重体である。


「なんだろ、でもそのお陰でとうまの周りはそんな騒がしくないっしょ?」


「確かに」


「無闇に抜け駆けしたら討伐隊に始末されるらしいよ!」



「こわっ!」



“らしい”ということは真実であるか定かでないようだ。

しかしそれでも要冬真を取り巻く環境は何よりも恐ろしいことが判明した。

まるで三権分立じゃないか、アル意味体制が確立していることが恐怖を生む。

ハルはいつの間にか授業に集中していて、私なんぞ気にもせず黒板の古文訳をノートに書き写していた。



わかったことは沢山あるが要約すれば、要冬真に関わってはいけない。




それだけだった。