「ぐっ…」

馬鹿にした態度がなんとも腹立たしい。
とにかく、とにかくだ。
私はこいつの奴隷と化すことだけは避けたい。
まず、ここから逃げなければ、確実打ち首獄門だ。気分的に。


しかし、手が縛られたままではどうにもならない。


「ぐぎぎぎぎぎき…」





体中に力を入れ、制服に食い込む縄の痛みも手伝い力任せに立ち上がる。



ダテに前の学校でNo.2張ってねーぞゴルァァァ!

こうなったら、縄は自力で千切ってやるわぁぁあ!


さらに体に力を入れていくと、縄はしなるような音を立てる。

「だぁぁあ!」





突如訪れた開放感に、私は目を丸くした。
床に視線を落とせば、適度にバラバラなった可哀想な縄の死骸が見える。

まさか本当に千切れると思っていなかったので、思いがけず自由になった体が中途半端に持ち上がった。



「あれ?マジで?」




ちょっとノリでやっただけなのに…。
縄、劣化してたのかな。
劣化だよねそうだよね…。





「…」


ていうかあれだな。
さっき“サル”とか言われたけど、これじゃあまるで、

「ゴリラだな」


「おい!私が思っても口に出せなかった現実をサラリと言うな!」


「思ってたならいいじゃねーか」


「よくねぇわ!つうか私は逃げるから、あばよ!」



私は、瞬時にロックオンした部屋の扉へ全力疾走した。



もう!絶対に拒否!











「じゃあこれに名前を…。あれ、冬真あの子はどうしたんです?」


「逃げた。まぁ、逃げても無駄だがな」











そうそして翌日、逃げた事が無駄であったと改めて絶望することになるのである。