「おい、これはどういうことだ親父」


「そういうことだ娘よ」


「わかんねー、よ!」


目が覚めると、私は見知らぬ制服を着て見知らぬ豪邸の前に立っていた。
隣に立つ親父はいつもとは違うスーツ姿で私の拳を軽々と避け片手でそれを捕まえる。

いくら鍛えたと言えど、師匠である親父に勝てるはずもなくそちらを睨み上げるが、当の本人は気にするわけもなくバカにしたように鼻で笑って手を離した。


ちっ…腹立つ。



「で、私を気絶させた挙げ句なんでこんなみたことのない豪邸の前に?」


「豪邸じゃないぞ。お友達沢山の学校だぞ」


「は?私の学校はもっと汚ないし」


似ても似つかない、大きな鉄格子の洒落た校門から覗く大きな庭の真ん中には真っ白な噴水、白い噴水なんて初めて見た。
奥に見える本館のような建物は、淡いクリーム色で造られたばかりの教会のように輝いて見える。



私の学校の校舎はヒビが入っていて、中庭にある噴水は緑色だ。
大体こんな大きくない。



妄想や事故だとしても酷い変わりようだ。

私が通っている高校は金白村【かねしら-むら】に唯一ある学校、金白第一高校。

金白村は小さく農家が盛んな村で、娯楽施設は全く存在しない平成からは考えられないほど金がない村だ。

その村の住人はカネシラーゼと言われている。



皮肉にも、あの東京シロガネーゼと掛けてあるらしいのだが、白金と金白とはなんとも悲しいニアミス。


「過去は捨てよう鈴。今日からここがお前の新しい学校だ」


「いやいやいや!あと一年で卒業だったじゃん」


「俺はなぁ、夢だったんだ。娘を品のいいお嬢さんに育てるのが」


「一から格闘技教え込んだ奴が言う言葉じゃねーよな」



「いいから、こい!」



「ぎゃぁぁあ!どういうことだよ離せクソ親父!」