原チャリに乗ったのは生まれて初めてだった。


私の“ファースト原チャリ”を奪ったタツ兄の裏の顔はスピード狂で、そのあまりの速さに怖がる私をそりゃあ面白がって、わざと車体を斜めに傾けたり、蛇行運転したりしやがった。


私はタツ兄に向かって怒りか嘆きか懇願かわかんない言葉を叫びまくってて、タツ兄はずっとゲラゲラ笑ってた。


『着いたぞ』ってタツ兄に言われて地面に降り立つと、変な浮遊感と吐き気に襲われた。

もう一生タツ兄の後ろには乗らねぇって神に誓ったけど、すぐに『帰りもあるじゃん』って気づいて泣きたくなった。


降りた場所は店が立ち並ぶ賑やかなとこで、『ここのどこかで悪魔が働いてんだ』って考えるとなんだか信じられなかった。


放課後はいつもバイトしてたのかなとか、あんな外見で面接受かるとこあるんだとか考えてた時、タツ兄がいきなり細い道に曲がった。


『近道』って言いながら進んでくタツ兄はいかにも“ここら辺に慣れてます”って感じで、『なんで近道知ってんの?』って聞いたら、ここはタツ兄が中2の時に引っ越した街なんだと知った。

タツ兄と悪魔の通ってた中学もこの辺にあるらしい。


そして。

私はついに、見つける事ができた。


今まで知らなかった、放課後の悪魔を──……