「あ、大丈夫ッスよ。もう動かねぇッスから」


あくまでも無邪気な笑顔のヤスくんは、「ほら」と倒れてる1人に片足を乗せて軽く揺らしてみせる。


……全然大丈夫じゃないと思うんだけど……。


私は言葉を失ったまま、呆然と立ち尽くす。

耳をこらせば僅かに聞こえる荒い息遣いや呻き声。


……どう反応していいかわからない。


ブラウン管越しに見るのとは違う、残酷すぎるくらいリアルな、彼らの世界。

それを目の当たりにした一般ピーポーな私は、一体何を言えばいいんだろうか。


あぁ……表情の作り方さえわからない。

私、今どんな顔してる?


ヤスくんの笑顔が少し困ったようなそれに変わり、何か言わねぇととは思ってみても、それらしい言葉は何一つ出てこない。

もどかしい。


少しくらい調子を合わせればよかったのにそうしなかった事を、今さら後悔しても遅いけど。


「──クマタ」