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ハルコは、その名前を知っている。
そのブティックで買い物をしたことが何度かある、程度の知っているだが。
そんな、トウセイについてのわずかな記憶を掘り起こそうとした彼女だったが、メイの方が、はぁっと大きなため息をついて、先にあきらめてしまった。
「もう、あるわけないですし…それに、クリスマスも終わってしまったんですから…」
だから、そのドレスの意味は、もう何もないのだと言いたいのだろうか。
クリスマスのために、綺麗なドレスを買うよう勧めたのはハルコ自身だ。
しかし、クリスマスなどただの口実だった。
要は、彼女をカイトの手によって着飾らせて、それを彼に見せつけてやりたかったのだ。
この世の中には、こんなにも彼の心を奪える相手がいるということを気づかせ、その様子を見て、ハルコも幸せになりたかったのである。
だから。
遅いなんてことは、全然ないと思っていた。
たとえ、その目的のドレスが売れてしまっていたとしても、別にもっと気に入るのがあるかもしれない。
どうせ結婚式には、二次会だの何だのがあるものなのだ。
その時の衣装にすればいいのである。
もしも望むなら、ハルコが結婚前祝いのパーティを開いてもいいくらいだ。
失敗したことのやり直しなら、いくらでもこの世の中には用意できるのである。
少なくとも、ハルコはそう思っていた。
「それじゃあ、行きましょうか?」
椅子から立ち上がりながら、ハルコは彼女を促した。
「え?」
不思議そうな顔に向かって、微笑みかける。
「私はまだ、あなたから預かっているドレス代を、カイト君には返していないのよ」
しかし、説得にあと15分、余計にかかった。
ハルコは、その名前を知っている。
そのブティックで買い物をしたことが何度かある、程度の知っているだが。
そんな、トウセイについてのわずかな記憶を掘り起こそうとした彼女だったが、メイの方が、はぁっと大きなため息をついて、先にあきらめてしまった。
「もう、あるわけないですし…それに、クリスマスも終わってしまったんですから…」
だから、そのドレスの意味は、もう何もないのだと言いたいのだろうか。
クリスマスのために、綺麗なドレスを買うよう勧めたのはハルコ自身だ。
しかし、クリスマスなどただの口実だった。
要は、彼女をカイトの手によって着飾らせて、それを彼に見せつけてやりたかったのだ。
この世の中には、こんなにも彼の心を奪える相手がいるということを気づかせ、その様子を見て、ハルコも幸せになりたかったのである。
だから。
遅いなんてことは、全然ないと思っていた。
たとえ、その目的のドレスが売れてしまっていたとしても、別にもっと気に入るのがあるかもしれない。
どうせ結婚式には、二次会だの何だのがあるものなのだ。
その時の衣装にすればいいのである。
もしも望むなら、ハルコが結婚前祝いのパーティを開いてもいいくらいだ。
失敗したことのやり直しなら、いくらでもこの世の中には用意できるのである。
少なくとも、ハルコはそう思っていた。
「それじゃあ、行きましょうか?」
椅子から立ち上がりながら、ハルコは彼女を促した。
「え?」
不思議そうな顔に向かって、微笑みかける。
「私はまだ、あなたから預かっているドレス代を、カイト君には返していないのよ」
しかし、説得にあと15分、余計にかかった。


