冬うらら2


 メイの話の中には、彼らの知らないカイトが山盛りで詰め込んである。

 いままで、彼らが見ていたカイトという存在は何だったのかと、驚くほどの珍しい品物ばかりが、荷馬車から降ろされるのだ。

 原石からは見違えるほどに、見事にカットされた宝石を見せられた気分。

 何度も何度も角度を変えて眺めては、感嘆の声を出したくてしょうがないのである。

「ウェディングドレスの話になった時よ……」

 ハルコは、記憶の糸をちょいとたぐった。

 それで十分すぐに思い出せるのだ。

 いきなりメイが、悲鳴をあげたところからだ。

 ハルコは、びっくりした。

 きっと、おなかの子もびっくりした。

「ど、ど、どうしよう……」

 途方に暮れた声。

 約束の時間に間に合わないくらい寝坊してしまった声と、それはとてもよく似ていた。

「どうしたの?」

 デザイナーズ・ブランドのドレスの話をしていたところだった。

 そんな時に、悲鳴でさえぎられたのだ。

 一体、彼女の頭には何がよぎったのだろうか。

「ど、どうしよう…すっかり忘れてた」

 気が動転したままのメイから、詳しい話を聞き出すまで、ハルコは何度も根気よく質問を続けなければならなかった。

 彼女の話は、こうだった。

 去年のクリスマスのために服を探していた時、たまたまとても綺麗なドレスを見つけて、取り置きをお願いしたというのだ。

 その時にお金がなかったので、後で払いに行こうと思っていたらしい。

 しかし、その直後に、いろいろとゴタゴタが続き、メイはあの家を出ていってしまった。

 それからいままで―― 約1ヶ月の間、そのことをすっかり忘れきっていたのだ。

 思い出すために必要だったキーワードは。

『トウセイ』