冬うらら2

◎16
「すごく嬉しそうじゃないか」

 玄関のドアを開けた瞬間、ソウマは『ただいま』よりも先にそんな風に声をかけてきた。

 どうやら、何も言わなくても身体の外まで嬉しさがこぼれだしていたらしい。

 ハルコは、あら、と少し恥ずかしくなった。

 小娘のように浮かれている自覚が、いまやっと出来たのと、それを彼に先に見つかってしまったせいである。

 おかえりなさいの意味も込めて、軽く唇を触れ合わせた後、ハルコは先にダイニングの方へと歩いた。

 あまりこのウキウキの顔を見られたくない、と思ってしまったせいだ。

 しかし。

 話さずにはいられない衝動が、身体の中に渦を巻く。

 いかに、あの二人のおかげで幸せな時間を持てたかということを、ソウマに伝えたくてしょうがなかった。

「やれやれ、オレなんかは…あいつと電話をちょっとした程度なのに」

 ずるいぞ、という言葉が言外に含まれているのが分かる。

 確かに、家政婦という仕事がなくなったハルコは、カイトと接触する機会は最近めっきり減ってしまった。

 その代わりに、メイとは、会おうと思えばいつでも会える状態だったのだ。

 結婚式の打ち合わせ、という口実をカサに、これから足繁く通えること間違いナシである。

 うっかり、病院の検診の日を忘れないようにしておかないといけない、と自分を軽く戒めなければならないほどだった。

「それでも、電話したんでしょう? 私がかけた時、カイトくん、うんざりした声だったわよ」

『またか』

 本日二人目のイチハラだったのが、その一言で分かったのだ。

「いやいや、オレは大事な話があったんだ」

 しょうがないと主張をするが、最初から最後まで、その大事な話だけで終始していないのは、よく分かっていた。

 どうせ、途中で彼を怒らせるようなことを言って電話を切られたに違いない。

 そうでなければ、ハルコが電話をした時、もうちょっとは態度がよかっただろうから。

「それで、今日は何を聞けたんだ?」

 二人とも、ダイニングの席についた時―― 口火を切ったのはソウマだった。