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「……ト?」
「カイト…?」
何度呼びかけられただろうか。
あたたかい手が、自分の頬に触れた瞬間に、ハッと彼の意識が戻ってきた。
すごく心配そうな、メイの瞳が見つめている。
悪夢にうなされたのを、誰かが気づいて起こしてくれたような温度。
そうだ。
メイは、そこにいる。
自分でも、信じられない安堵の息がこぼれた。
彼女はどう解釈したのか。
「やっぱり…明日にでも戻してくるから……ごめんなさい」
慌てて箱のフタを閉めて、彼女はそれを持ち去ろうとする。
これを見せてしまったから、カイトの調子がおかしくなったとでも思ったのだろうか。
慌てたのはカイトの方だ。
いま、やっともう一度、彼女がそこにいるのだと確認したばかりなのに、また目の前から消える気なのか。
それが、たとえ二階であったとしても、いまのカイトには耐えられない。
足を踏み出して、逃げるような身体を捕まえた。
「あっ…」
箱が、床に落ちて跳ねる。
緑色と白の水が、こぼれて広がった。
カイトは目もくれずに、メイを抱きしめる。
伝わってくる温度を、身体いっぱいで感じようとした。
それ、が。
そう、『それ』というものが、決してこの空気を壊したりしないように、カイトは二人の間に『それ』が入る隙間もないくらい、ぎゅっと抱きしめるのだ。
カイトが、一番恐れていて―― そして、二度とその襲来にあわないように。
「……ト?」
「カイト…?」
何度呼びかけられただろうか。
あたたかい手が、自分の頬に触れた瞬間に、ハッと彼の意識が戻ってきた。
すごく心配そうな、メイの瞳が見つめている。
悪夢にうなされたのを、誰かが気づいて起こしてくれたような温度。
そうだ。
メイは、そこにいる。
自分でも、信じられない安堵の息がこぼれた。
彼女はどう解釈したのか。
「やっぱり…明日にでも戻してくるから……ごめんなさい」
慌てて箱のフタを閉めて、彼女はそれを持ち去ろうとする。
これを見せてしまったから、カイトの調子がおかしくなったとでも思ったのだろうか。
慌てたのはカイトの方だ。
いま、やっともう一度、彼女がそこにいるのだと確認したばかりなのに、また目の前から消える気なのか。
それが、たとえ二階であったとしても、いまのカイトには耐えられない。
足を踏み出して、逃げるような身体を捕まえた。
「あっ…」
箱が、床に落ちて跳ねる。
緑色と白の水が、こぼれて広がった。
カイトは目もくれずに、メイを抱きしめる。
伝わってくる温度を、身体いっぱいで感じようとした。
それ、が。
そう、『それ』というものが、決してこの空気を壊したりしないように、カイトは二人の間に『それ』が入る隙間もないくらい、ぎゅっと抱きしめるのだ。
カイトが、一番恐れていて―― そして、二度とその襲来にあわないように。


