冬うらら2


 本当は、買うつもりがなかったとかそういう表現になるものなのか。

 だとしたら、カイトにそんな言い訳をする必要はなかった。彼女が欲しいと思ったのならそれでいい。

 もしも、欲しがっているのに我慢するような態度を見つけていたら、きっとカイトの方が耐えられなかっただろうから。

「本当は…これは……去年」

 しかし、彼の考えていたことは外れた。

 メイは、確かにいま『去年』という単語を使ったのである。

 去年というのは、まったく二人が他人同士だった頃だ。

 その去年が、どうして今更ここに出てくるのか。

 怪訝に、彼女の言葉の続きを待つ。

「去年…クリスマスの……なのに、今頃……」

 ぽつりぽつり。

 単語を拾い集めて、つぎはぎにするので精一杯という口調だった。

 しかし、その言葉はカイトを切り刻んだ。

 まるで、交通事故の記憶。

 悪夢としか思えない、とにかく思い出したくもないフラッシュする映像の羅列。

 全ての絵に暗いフィルターをかぶせられ、それでも、心の中から決して消えようとはしない呆然とした後悔の瞬間。

 自分が壊した、クリスマスの時間。

 その時のための―― ドレス。