冬うらら2

◎コーラ

 その大きな声が、聞こえなかった人はいないだろう。

 いたとしても、せいぜい酔いつぶれて寝入っている人くらいだ―― それほどの音量だった。

 ハルコが、店の入り口の方に視線を投げると、嬉しそうに飼い主の元に駆けてくる犬のような生き物を見ることが出来た。

 男の姿をしているそれは、他のモノは目もくれずに、真っ直ぐリエの前に向かい、動きを止めた。

 期待と喜びに満ちた表情は、この空間には似合わないほど明るく屈託がない。

 あらあら。

 何とまあ。

 ハルコは、ぱっと表情を輝かせた。

 きっと、見ることは出来ないと思っていた、リエの彼氏のようだ。

 彼女に向かって、あんな表情と呼び方の出来る男が、単なる知り合いとは思えなかったのである。

 よく日に焼けた顔。

 健康的で、明らかにスポーツをたしなんでいるだろうその姿に、一瞬ハルコでさえ見惚れてしまった。

 見るからに、『いい身体』の男に出会えることは、なかなかないのだ。

 あら、いけない。

 奪われていた目を戻して、ハルコは立ち上がった。

 これは、自分の席に戻らなければならないという使命感が、彼女の中を占拠したのである。

 これまで、一緒にいた副社長に簡単な挨拶だけすると、目標に向かって歩き出す。

 しかし、近づけば近づくほど、不穏な光景であることに気づいた。

 青年は嬉しそうな顔のまま。

 リエは、驚きに固まっている。

 何故かそんな彼女の足元には、あのウェイターが控えているではないか。

 一体、どういう状況なのか。

 ちょっとシュウの方に行っている間に、事態が変わっていたようだ。