冬うらら2


「コウノが最初に開発に携わった、BADIAの初版は、我々マニアの間でだけこっそり出回っています。いま流通しているのは、子供向けに改造したものですから」

 本来、知り得なかった裏事情まで語ってくれる。

 カイトが本当に、彼らの間で尊敬されているということが、言葉のハシバシから感じることが出来た。

「我々の尊敬というものは、盲信でもラブモードでもなくて…『すげぇ!』って言葉一つです。どうやらハナも、その中の1人ですね。ただ社長への尊敬は、みんな少し恐れが入っているんですが、彼女にはそれがないみたいで」

 毎回、何かと騒いでいますよ。

 いろんな、エピソードを聞かせてくれる。

 披露宴に招待されなかったことに暴れたハナや、カイトの仕事ぶりや、そのほかいろいろ。

 水割りの味よりも、よっぽどそっちの方が、おいしくてしょうがなかった。

「実際、少し意外でしたよ…あの奥さんを見た時は」

 メイのことを、言っているらしい。

 それには、ソウマも同感だ。

「だが、本当にメロメロでね」

 その事実は、今日主役不在の披露宴で、たっぷりバラしてやった。

 チーフもそれを思い出したのか、にこりと笑って。

「はい、それは今日たっぷり見せてもらいました…おかげで、今までの社長の態度のナゾが全部解けましたよ」

 これは。

 ソウマは、笑みを止められなかった。

 今度は、彼の氷の方が笑う。

 これは、カイトが次に会社へ行った時が見物だ、と。

 式や披露宴に出た人間たちから広まる、新たな社長像。

 愛妻家のコウノの姿が、どのくらい会社に影響を与えるのだろうか。

「我々オタクとしては…」

 チーフは、目を伏せた。

「次の、社長のゲームの企画が楽しみです」

 楽しそうな彼の声に―― ソウマは、まったくだと笑った。