冬うらら2


 そのゲームは、いまだ鋼南の最強の名作だと、謳われているらしい。

 カイトが、寝食忘れて力を注いだ作品だ。

 現実の人間ではないというのに、ソウマはマリアというキャラクターを、今でも忘れられなかった。

 今度、その第二弾が発売されるとかいう話は、すでに耳には入っている。

 彼女は、どうなったのだろう。

 本物の憎悪の渦の中で、主人公は選択をすることが出来る。

 何度も何度も、彼女を失うかどうか選択が出来るのだ。

 そして、ただの一度でも『はい』を選択すると、永遠にマリアを失う。

 彼女を失うまいとすればするほど、前よりもなお一層、重い憎悪がのしかかってくるのだ。

 更に、道のりは困難を極め続ける。

 ソウマは、途中でマリアを失ってしまった。

 ゲームをやり慣れない彼は、そんなシステムになっているとは、思ってもみなかったのだ。

 ただ、彼女のいない人生が始まり、憎悪にまみれたイヤなシーンが半減する。

 しかし、道のりの平坦さを感じた瞬間に、失った彼女を常に思い出させられる―― そんな、罪作りなゲームだった。

「新しいゲームを始める時、我々オタクときたら、たくさんのゲームをやりこんでいる自負のおかげで、何もかも自分の予想の範囲内におさまるものだと、タカをくくっていて…」

 氷は、鳴らなかった。

 カイトの作ったゲームを、思い出しているかのように、チーフは動きを止める。

「でも、コウノのゲームは、そんなナメた真似を絶対に許してくれないんですよ。いつもいつもギリギリを要求してきて、我々さえも振り回し、『ああ、もういいや』と思った瞬間に、取り返しのつかないほど多くのものを失わせるんです。コウノのゲームは、苦しければ苦しいほど、絶対にあきらめてはいけないゲームなんです」

 BADIAだって、ギリギリまで子供に耐えうるレベルに落としたんですよ。

 ソウマが、そのゲームをしたことがあるとは知らないだろうが、そんなことはどうでもいいらしい。

 チーフの付け足した言葉に、なるほどと思った。

 きっともっと、カイトの出した要求は、高く厳しいものだったのだろう。