冬うらら2


「ねーねー! ちょっとお話しましょ! お酌してあげるから!」

 掴んだ手を、絶対に離すもんか。

 根気勝ちして、洗いざらいしゃべらせてやる―― 酔っているせいもあるのか、超絶ワガママかつ強引になっている、第三開発部の紅一点だった。

 そのまま、ズルズルと空いてそうな席に引っ張っていく。

「お、おい…」

 困ってはいるが、ふりほどけないでいる。

 ますます高まる勝利感に、燃えていたというのに。

「あかん! 何しとんのや!」

 その手が、いきなり強い力でもぎはがされた。

 元秘書の夫の位置からでは、物理的に不可能な角度からの力だ。

 えっ?

 振り返ると。

 ハナの手を掴んでいるのは。


「……何で、あんたなのよー!!」


 101匹ワンちゃんの親玉だった。

 もう、彼との話は終わったはずだった。

 というか、最初から別段ハナの心をそそりまくるような、ステキなお話はなかった。

 ワンコは、結構いいソフトを作りはするが、コウノのようにハナのツボをぐいぐい押すようなゲームとは主旨が違うのだ。

 それに、社長はこっちの方が、色男の伊達男だ。

 そんな男を前にすると、ムキになって興味を失うハナにしてみれば、この場面で一番おいしいのは元秘書の夫であり、ワンワン物語ではなかった。

「離してよ!」

 ブンッッ!

 思い切り、手に力を込めて振り払う。

 するとぱっと手は離れたが、腕に勢いを込めすぎていて足がよろける。

 視界のハシに、遠ざかっていく元秘書の夫が見えた。

 逃げるなぁ~!!!

 自分がよろけた挙げ句、倒れそうになっているというのに、この期に及んで、まだ彼女の興味はそっちに行っていたのだった。