冬うらら2


 ちょうどその時、ウェイターがスモークサーモンを、この修羅場のテーブルに運んできた。

 とりあえず、ソウマが受け取る。

 ついでに、多少行儀が悪いとは知ってはいたが、一枚手で取ると口に運ぶ。

 その後で、テーブルの上の空いている場所に、皿を着陸させるのだ。

 サーモンピンクというのは、何て風情のある色の名前なのか。

 ソウマの口の中は、ワインを飲みたくなるサーモンの味で充満していた。

 しかし、その辺りにあるワインときたら、余りに適当なグラスに注がれているではないか。

 飲み手の性格が伺い知れて、つい笑ってしまう。

 自分がおいしいと思うような形なら、何でもいいのか。

 誰が注いだか知らないが、カイトがやりそうな所業だ。

「あんまり邪魔しないようにした方がいいぞ、シュウ…馬に蹴られても知らないからな」

 言っても理解出来ないかもしれないが、一応クギを刺す。

「そうよ…その辺にしてあげたら? 社長さん困っているじゃない」

 そこで、ソウマに百万の味方がついた。

 いつの間にか、自分の妻が援護射撃に来ていてくれたのだ。

 しかし、気に入らないのは、最後にタロウ氏に笑顔を向けたことか―― いかんいかん、あれは単なる社交辞令の微笑みだ。

 ソウマは、慌てて自分の気持ちをうち消した。

「おお…元秘書さんやあらへんの! おおきに!」

 社長という肩書きを持っているには、少々屈託のない笑みが返ってくる。

 幸い、その視線にハルコへの色気は含まれていなかったので、夫としては彼を安全パイのエリアに放り込むことが出来た。

「心外です…」

 2人がかりでたしなめられるとは思っていなかったようだが、シュウはハルコの存在を、普通の女性以上に認めているらしい。

 最後まで、油断なくタロウ氏を見てはいたが、ようやくその席を離れていった。

 秘書時代に、きっと信用を得ていたのだろう。

 すごいことである。

 しかし、少し離れた席から、じっと見ていることには変わりなかったが。