冬うらら2


「最初から、とっととそうしてればいいのよ」

 満足な結果に、ハナがうんうんと頷く。

「バカ野郎! 何かトラブルが起きたらどうするんだ!」

 先輩が近くで怒鳴っているが、彼女の耳には入らなかった。

 いや、入ったからこそ反撃できたのか。

「うっさいわね! この程度のことでガタガタ言うような小物なら、コーナンの協力会社なんてやってけるワケないでしょ! うちのボスは、コウノなのよ…もっと理不尽に決まってんじゃない!」

 威勢よく、ハナはタンカを切った。

 ワンコのことくらい、彼女は知っている。

 コーナンのパッケージで、ソフトを売り出しているのだ。

 知らないハズがない。

 どういう力関係かも、黙っていても耳には入ってくるのだ。

「お、おい…ハナ」

「ワンコが怖くて、ペディグリーチャムが買えるかぁ!」

 怒鳴ったハナの真横から。

 腕がにゅっと伸びた。

 その手の先には、忌々しいワインが。

 しかも、封が切れていた。

「空いたで…」

 ぞくっ。

 背筋に、何かが走るほどの―― いい声だった。

 それに、驚いてばっと振り返る。

 そういえば。

 さっきから黙ってつったっていたので、声を聞いたのはこれが初めて。

「ついでにチーズも、もろてきたで」

 ワインには、チーズやろ?

 右手にはワイン。

 左手にはチーズの皿。

 でも。

 ワンコの社長の目は、ハナに注がれていた。