冬うらら2


「どうぞ、召し上がってください」

 しかし。

 そんな努力も、副社長様がナッツサラダの小皿を、目の前に置いた瞬間に全て崩れ去る。

 契約書を取り出す時と、同じ声のトーンと状態だった。

 あ、あかん! 逃げな!

 タロウは、頭の中でオトメちゃんを破り捨てると、大急ぎでいろんな口実を考えようとした。

 この場を逃げるためだ。

 二次会より、自分の精神の安定を望んだのである。

「あ、ト、トイレ…トイレ行きたいわ~。ほな、ちょっと失礼します」

 慌てて彼が掴みだした選択は―― 世界で一番、古典的な口実だった。