冬うらら2

¥ナッツサラダ

 ああっ!!!!!

 タロウは、どん底まで突き落とされた。

 さっきまで、彼女の両側にはべっていてくれた、麗しの鋼南レディたちが、蜘蛛の子を散らすように逃げて行ってしまったのである。

 それもこれも、向かいに座っている、食欲の失せる顔のせいだった。

 シャキーン。

 キラーン。

 わずかな隙も見せず、直立したまま座っている存在が一声かけただけで、社員が逃げ出すとは―― 社内において、この副社長がどういう存在なのか。

 それを、はっきり思い知らされた。

 確かにどう見ても、社員に慕われて好かれるタイプとは思えない。

 自分がやらかした、小さなミスさえ見つけられて指摘されそうなのだ。

 浮ついたゲーム会社などにいるよりは、税務署にいる方が、よっぽど似合っている。

 しかし、今はそんな鋼南電気副社長の、適職を考えている状態ではない。

 タロウの両隣は空っぽとなり、いきなりブリザードが吹き荒れたのだ。

 おまけにもっと寒いことに、あのシュウ氏がビールのお酌をしようとしてくるのである。

 その上、テーブルに届けられたナッツサラダなども、取り分けてくれようと。

 全て、冗談の一つもない、真顔での行動だった。

 カンベンしてやぁ~~!!

 その怪奇な光景に、ワンコの社長は身をひねって、ソファの背もたれにしがみついてしまった。

 いくらなんでも、これでは拷問だ。

 何のために、タロウは二次会に顔を出そうと思ったのか。

 それは、可愛い綺麗な女性たちと、楽しいヒトトキを送るためであって、決して高性能のロボットと、交流を深めたかったワケではないのだ。

 それならまだゲームの中にいる、AIガール『オトメちゃん』とおしゃべりをしていた方がマシである。

『オトメ、これから着替えてくるの…ちょっと待っててね』

 自分の精神を保つために、タロウは目の前の現実から逃避して、頭の中でAIガールの姿を想像しようと必死だった。