冬うらら2


「何や、騒々しいなぁ?」

 離れた席で、騒ぎが起きているようだ。

 乾杯が終わって、二次会も始まったばかりだというのに、派手なヤツもいたものである。

 成り行きで、二次会にまで参加することになったタロウだったが、今は鋼南電気の女性社員を2人左右にはべらせて、なかなかいい気分で、ビールに口をつけていた。

「どうせ、開発の人たちでしょう?」

 右の93点の女性が、ちょっとイヤそうな顔をしてみせた。

 どうやら、開発という存在は、余り女性にはウケがよくないらしい。

 そりゃ、まあ、なぁ。

 タロウは、にかにか笑ってしまった。

 納期直前の開発の連中など、見せられたものではないのだ。

 それは鋼南だけではなく、彼のところも一緒だった。

 百年の恋もいっぺんで冷めそうな、淀んだ世界がそこには繰り広げられる。

 とても、子供に夢を与えるものを作っているようには見えないのだ。

 でも、まだタロウは伊達男の自覚があった。

 どんなにヘトヘトでドロドロでも、女の前だけは息を吹き返す。

 へたれている姿など、見られるワケにはいかない。

「あ、社長…どうぞ」

 左の94点が、瓶を持ち上げてくれる。

 グラスには、まだ半分は残っているものの、せっかくお酌をしてくれるというのだ。

 飲まないはずがない。

 タロウは、ぐいっと残りを飲み干した。

「いやぁ…オレは幸せやなぁ。こんな両側に……ゲッ!」

 喜びのサービストークをしようとした瞬間、タロウは踏みつけられたカエルのような声をあげた。

 右には93点。左には94点で、かなりの天国を味わっていたワンコの社長だったが。

 空いていた目の前の席が埋まった瞬間、冷たいものが背中を流れたのだった。

「本日は、このような席にまでご出席いただき、誠にありがとうございます……」

 目の前の席に座ったのは。

 メガネの反射も麗しい美女―― ではなく、KO-NANの副社長だったのだ。

 何で、こんな席におるんやぁ~~~!!

 タロウは、口の中に残ったビールを、とりわけ苦く感じてしまった。