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「あらあら、あの元気のいい子は誰?」
ハルコにそう聞かれて、リエは軽いめまいを覚えた。
彼女の指先にいるのは、鋼南電気の男性社員のネクタイを締め上げている女性で―― 会社内でも、非常に目立つ存在だった。
名前を―― 確か、ハナと。
社内は走り回る。
騒ぐ、噂は振りまく。
開発の数少ない女性ということもあって、他の女性社員の中でも、飛び抜けて異質な存在だった。
開発の人間は日頃私服なので、尚更、他の仕事についている制服の女性社員から浮き上がる。
特にハナは、女性同士の噂の中でも、賛否両論はっきり別れる存在だった。
リエは、噂に荷担することはない。
しかし、着替えを行う女性用のロッカーなどでは、イヤでも耳に入ってくるのだ。
『騒々しくて、オタクで、バッカみたい…カレシもいないんじゃないの?』
『あら、あの子好きよ。はっきりしていて面白いじゃない』
その両極端の噂を聞いているために、直接知り合いではないリエは、どうハルコに答えていいか分からなかった。
知らない人間のことをとやかく言いたくはないのだが、いまのハナの姿を見る限りでは、決して胸を張って紹介できそうになかった。
「は、はあ…開発の女性社員のようですね」
私は、直接知り合いではないもの。
そう自分に言い聞かせながら、リエは無関係を主張した。
「あら、そうなの? カイト君とケンカしそうなタイプねぇ…ふふ」
楽しそうにハルコは笑うが、そんなことを有能な社長秘書は、想像したくもなかった。
ミサイル同士を、ぶつけ合うような結果になるのではないか。
とてもじゃないが笑えない。
社長の機嫌一つで、彼女の仕事が左右される可能性があるのだ。
トラブルなんて、社長の存在だけで十分である。
「ああほら、せっかくの二次会なのに、そんな暗い顔しちゃダメよ…はい、ビールでも飲んで」
ハルコが、汗をかいたビールの瓶を持ち上げて勧めてくれる。
一度は断ったものの、彼女の笑顔に勝つことが出来ず、「はぁ…」と曖昧な言葉を呟きながら、リエは元先輩にお酌をしてもらったのだった。
「あらあら、あの元気のいい子は誰?」
ハルコにそう聞かれて、リエは軽いめまいを覚えた。
彼女の指先にいるのは、鋼南電気の男性社員のネクタイを締め上げている女性で―― 会社内でも、非常に目立つ存在だった。
名前を―― 確か、ハナと。
社内は走り回る。
騒ぐ、噂は振りまく。
開発の数少ない女性ということもあって、他の女性社員の中でも、飛び抜けて異質な存在だった。
開発の人間は日頃私服なので、尚更、他の仕事についている制服の女性社員から浮き上がる。
特にハナは、女性同士の噂の中でも、賛否両論はっきり別れる存在だった。
リエは、噂に荷担することはない。
しかし、着替えを行う女性用のロッカーなどでは、イヤでも耳に入ってくるのだ。
『騒々しくて、オタクで、バッカみたい…カレシもいないんじゃないの?』
『あら、あの子好きよ。はっきりしていて面白いじゃない』
その両極端の噂を聞いているために、直接知り合いではないリエは、どうハルコに答えていいか分からなかった。
知らない人間のことをとやかく言いたくはないのだが、いまのハナの姿を見る限りでは、決して胸を張って紹介できそうになかった。
「は、はあ…開発の女性社員のようですね」
私は、直接知り合いではないもの。
そう自分に言い聞かせながら、リエは無関係を主張した。
「あら、そうなの? カイト君とケンカしそうなタイプねぇ…ふふ」
楽しそうにハルコは笑うが、そんなことを有能な社長秘書は、想像したくもなかった。
ミサイル同士を、ぶつけ合うような結果になるのではないか。
とてもじゃないが笑えない。
社長の機嫌一つで、彼女の仕事が左右される可能性があるのだ。
トラブルなんて、社長の存在だけで十分である。
「ああほら、せっかくの二次会なのに、そんな暗い顔しちゃダメよ…はい、ビールでも飲んで」
ハルコが、汗をかいたビールの瓶を持ち上げて勧めてくれる。
一度は断ったものの、彼女の笑顔に勝つことが出来ず、「はぁ…」と曖昧な言葉を呟きながら、リエは元先輩にお酌をしてもらったのだった。


