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さっき。
振り返った瞬間は、心臓が止まるかと思った。
彼女に、その布っきれが乗っかっているだけで、いきなり違う存在にさえ思えたのだ。
白いヴェールの内側から、彼女の顔が透けて見える。
でも、はっきりと見えるワケじゃない。
ぼやけて、しかし、そこにチョコレート色の目があるのは分かった。
自分を見ていたのも。
今のメイは、普通の服だが。
もし、それがハルコの言うようなウェディングドレスだったりした日には―― カイトの心臓は、本当に止まってしまうかもしれない。
必死でその姿を想像しようとしても、うまく出来なかった。
たとえ出来たとしても、現物には到底及ばないに違いない。
どんなにシミュレーションしても、きっと心臓は穏やかにその事実を受け入れたりしないだろう。
メイの方は、というと。
「あの…でも、別に…」
別に?
カイトのアンテナが反応する。
彼に、女の夢や希望なんてものは分からない。
しかし、いまメイが口にした、濁ったような言葉には、いろんな気持ちが混ざっていたような気がする。
淋しい、みたいな音も混ざっていたような。
「ダメよ、遠慮なんかしちゃ。一生に一度しか着られないのに…後から着ればよかったって思っても、もう遅いのよ」
更に、ハルコがたたみかける。
後から。
これから、二人はずっと婚姻関係だ。
10年たって―― もしも、彼女がぽつりと言ったら、カイトはどうすればいいのか。
『ウェディングドレス…着たかったな』、と。
彼女のとこだ。
10年たっても、言ってくれないかもしれない。
たとえ、本当にそう思っていたとしても、カイトは一生知らないままなのかも。
そう思うと、ゾッとした。
さっき。
振り返った瞬間は、心臓が止まるかと思った。
彼女に、その布っきれが乗っかっているだけで、いきなり違う存在にさえ思えたのだ。
白いヴェールの内側から、彼女の顔が透けて見える。
でも、はっきりと見えるワケじゃない。
ぼやけて、しかし、そこにチョコレート色の目があるのは分かった。
自分を見ていたのも。
今のメイは、普通の服だが。
もし、それがハルコの言うようなウェディングドレスだったりした日には―― カイトの心臓は、本当に止まってしまうかもしれない。
必死でその姿を想像しようとしても、うまく出来なかった。
たとえ出来たとしても、現物には到底及ばないに違いない。
どんなにシミュレーションしても、きっと心臓は穏やかにその事実を受け入れたりしないだろう。
メイの方は、というと。
「あの…でも、別に…」
別に?
カイトのアンテナが反応する。
彼に、女の夢や希望なんてものは分からない。
しかし、いまメイが口にした、濁ったような言葉には、いろんな気持ちが混ざっていたような気がする。
淋しい、みたいな音も混ざっていたような。
「ダメよ、遠慮なんかしちゃ。一生に一度しか着られないのに…後から着ればよかったって思っても、もう遅いのよ」
更に、ハルコがたたみかける。
後から。
これから、二人はずっと婚姻関係だ。
10年たって―― もしも、彼女がぽつりと言ったら、カイトはどうすればいいのか。
『ウェディングドレス…着たかったな』、と。
彼女のとこだ。
10年たっても、言ってくれないかもしれない。
たとえ、本当にそう思っていたとしても、カイトは一生知らないままなのかも。
そう思うと、ゾッとした。


