◎
しかし。
まだ、新郎新婦はケーキの前から、逃げることはできなかった。
それについては、ハルコはぬかりはない。
新婦の希望で、本物のケーキにした時に、もう一つ会場側に提案したことがあったのだ。
すると、にっこり笑って担当者は『できますよ、では、そうしましょう』と答えたのである。
シュウ…頼んだわ。
カメラマンに、大きな期待を寄せる。
「いまナイフの入りました愛のケーキを、お互いに一口ずつ食べさせあっていただきましょう!」
ジャジャーン!!
実際には鳴らないファンファーレが、ハルコの中では確かに演奏された。
これが、彼女が披露宴に仕掛けた隠し球だったのだ。
スタッフは、ささっとケーキに近づくと、ケーキをひとかけら切り分け、小皿に乗せる。
そして、二人に捧げ持つように差し出すのだ。
戸惑う新郎と新婦。
「では、最初に新郎の方から、新婦に…」
固まったままのカイトに、容赦ない進行の声。
高まる周囲の、期待の視線。
どうしたらいいのか分からない新婦。
「新郎の手で、口に運んであげてください」
さらに、ズバンズバンと畳みかけられる。
あら。
ちょっと酷だったかしら。
ハルコは、微笑みを絶やさないまま、そう思った。
しかし。
まだ、新郎新婦はケーキの前から、逃げることはできなかった。
それについては、ハルコはぬかりはない。
新婦の希望で、本物のケーキにした時に、もう一つ会場側に提案したことがあったのだ。
すると、にっこり笑って担当者は『できますよ、では、そうしましょう』と答えたのである。
シュウ…頼んだわ。
カメラマンに、大きな期待を寄せる。
「いまナイフの入りました愛のケーキを、お互いに一口ずつ食べさせあっていただきましょう!」
ジャジャーン!!
実際には鳴らないファンファーレが、ハルコの中では確かに演奏された。
これが、彼女が披露宴に仕掛けた隠し球だったのだ。
スタッフは、ささっとケーキに近づくと、ケーキをひとかけら切り分け、小皿に乗せる。
そして、二人に捧げ持つように差し出すのだ。
戸惑う新郎と新婦。
「では、最初に新郎の方から、新婦に…」
固まったままのカイトに、容赦ない進行の声。
高まる周囲の、期待の視線。
どうしたらいいのか分からない新婦。
「新郎の手で、口に運んであげてください」
さらに、ズバンズバンと畳みかけられる。
あら。
ちょっと酷だったかしら。
ハルコは、微笑みを絶やさないまま、そう思った。


