冬うらら2


「あんたが金貸しかい? この子にどんなひどいことをしたんだい!」

 一度カッとなると、後先を考えることが出来ない。

 お前の悪いところだと、夫に言われるのだが、これはもう性分なのだからしょうがない。

 2、3発殴りつけてやろうと、リンは男の方に足を踏み出した。

 たいていの男は、彼女の上背と、気性の激しさに臆して、この瞬間で逃げ腰を見せるのだが、男は微動だにしない。

 それがまた、ひどいヤクザものに見えて、更に頭に血が昇る。

 しかし、その身体は引き留められた。

 誰あろう、メイに。

「お、お姉さん! お姉さん、違うの! 違うんだったら!」

 腕に、必死でしがみついてくる。

 彼女とのつきあいも長いので、これからリンがどういう行動に出ようとしているのか、きっとすぐに分かったに違いない。

 ヤクザものを殴った後の報復とか、そういうことを考えて引き留めた―― にしては、ちょっとメイの様子は違っていた。

 まるで、あの男を守るかのような一生懸命の表情だ。

 おや?

 リンは、その瞳に押されて動きを止める。

 一体、どういうことだろう。

「か、彼は…その…えっと…あの……私の…」

 問いただそうとすると、途端に彼女は言い淀んで。

 強い口調でこられると、いつもメイはそんな風になってしまう。

 悪いクセだ。

『もっと、シャキシャキ答える!』

 短気なリンは、子供の頃からそう言い続けてきたが、どうやら生まれつきのものは、なかなか治らないらしい。

 その上、メイの顔は真っ赤になっていた。

 照れているようだ。

 照れているせいで、余計に口が動かなくなってしまったのか。

 照れる?

 あの男との関係を聞いて、顔を赤らめるということは。

 リンは、メイをじっと見た後、男の方に視線を投げた。

 愛想の悪い、仏頂面がそこにはあって。