冬うらら2


「メイ!」

 信じられない心に捕らわれながらも、大きな声で彼女を呼んだ。

 あの黒い髪も、あの顔も。

 間違えるはずなんかなかった。

「リンお姉さん!」

 嬉しさに、弾け飛んでしまいそうな勢いで、すぐそばまで来た身体を、リンはぎゅっと抱きしめた。

 ああ、間違いない。

 メイが、本当に帰ってきたのである。

 リンの頭には、『母を訪ねて三千里』や、『家なき子』で、最後に母と再会する子というシーンが頭をよぎった。

 子供の頃は、「よかったね」と男泣きしていたのだが、いま、本当にその時の母親の気持ちを、理解したような気がしたのだ。

 しかし、今この瞬間は余計なことを考えずに、ひたすらに彼女との再会を喜ぶことにした。

 が。

 メイは、一人ではなかった。

 遅れて運転席のドアから、見知らぬ男が出てきたのである。

「……あん?」

 リンは、目を細めた。

 うさんくさげに、相手を見ると―― スーツを着て、ネクタイこそしめているものの、顔に品性はなく、目つきに柔和さのない男だった。

 よさげな車に乗って、よさげな服を着て、そうして顔つきの悪いヤツの商売なんて決まっている。

 成金だ。

 しかも、人から金を吸い上げるタイプの。

 その第一印象から、リンは一瞬にして、彼が金貸しであると判断した。

 メイを連れ去り、食い物にしたヤツに違いないと。

 もしや、この男がメイにひどい真似を!

 リンの頭の中には、『情婦』だの『愛人』だの『虐待』だの、ロクな文字が浮かばなかった。

 頭にかっと血が昇る。

 彼女自身に借金があるワケでもないのに、人生をメチャクチャにしただろう男が、憎くてしょうがなかったのだ。