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「……!」
分かった瞬間、カイトは硬直した。
これは。
この。
カップは。
白い、マグカップだった。
何の柄もなくシンプルで、本当にただの白いマグカップ。
一見特徴が何もないそれを見て、しかし、カイトは『あのカップ』であることを確信していた。
振り返る。
メイを、だ。
彼女はそこにいて、片づけの作業をしているはずだった。
しかし、作業の手は止まっていた。
そして、メイは―― 自分を見ていた。
驚いて、動けない顔だ。
視線は、カイトの持っているそのカップに注がれている。
間違いなかった。
これは。
結婚する前の、彼女が出ていく前の、夜のお茶のカップだったのだ。
カイトの中で、記憶が一気によみがえる。
夜のお茶。
彼にはコーヒーを。
メイは、お茶だか紅茶を入れて、一緒に飲んだ。
別に、何をしゃべったワケでもない。
けれども、一緒にいられるささやかで貴重で、信じられないくらい優しい時間。
お茶を飲むためだけの時間が、あんなに大事だと思ったのは、あれが初めてだった。
その時に、彼女が使っていたのが、この白いカップだったのだ。
元はといえば、カイトのカップだった―― らしい。
ハルコがくれたものだが、自分で使った記憶はない。
あったかもしれないが、覚えていない。
メイは、何故このマグカップを持ち出したのか。
それを持ったまま、じっと彼女を見る。
別に、顔に答えが書いてあるわけでもないのに、目をそらせなかった。
「……!」
分かった瞬間、カイトは硬直した。
これは。
この。
カップは。
白い、マグカップだった。
何の柄もなくシンプルで、本当にただの白いマグカップ。
一見特徴が何もないそれを見て、しかし、カイトは『あのカップ』であることを確信していた。
振り返る。
メイを、だ。
彼女はそこにいて、片づけの作業をしているはずだった。
しかし、作業の手は止まっていた。
そして、メイは―― 自分を見ていた。
驚いて、動けない顔だ。
視線は、カイトの持っているそのカップに注がれている。
間違いなかった。
これは。
結婚する前の、彼女が出ていく前の、夜のお茶のカップだったのだ。
カイトの中で、記憶が一気によみがえる。
夜のお茶。
彼にはコーヒーを。
メイは、お茶だか紅茶を入れて、一緒に飲んだ。
別に、何をしゃべったワケでもない。
けれども、一緒にいられるささやかで貴重で、信じられないくらい優しい時間。
お茶を飲むためだけの時間が、あんなに大事だと思ったのは、あれが初めてだった。
その時に、彼女が使っていたのが、この白いカップだったのだ。
元はといえば、カイトのカップだった―― らしい。
ハルコがくれたものだが、自分で使った記憶はない。
あったかもしれないが、覚えていない。
メイは、何故このマグカップを持ち出したのか。
それを持ったまま、じっと彼女を見る。
別に、顔に答えが書いてあるわけでもないのに、目をそらせなかった。


