□5
ベッドを車に積み込んで、彼女の部屋に戻ってくる。
手を見ながら。
あのベッドは新品ではなかったのだろう。
金具がサビていて、カイトの手を赤く汚してしまったのだ。
このまま服でも触れば、服も赤くするに違いなかった。
彼は流しに立つ。
服を汚すのがイヤだったワケではない。
だが、服を汚してしまうと、それをメイが一生懸命、手間暇かけて洗うだろう。
それが、イヤだったのだ。
バチャバチャと手を洗う。
何気なく、ちらと横を見ると。
台所周りの片づけを、まだ彼女はしていないようだった。
食器などが、脇のちいさなケースのようなものに入っているのが見える。
透明なカバーなので、中身が分かるのだ。
いくつかの食器が、伏せて置いてあって。
統一性のない茶碗や皿。
ここで、朝食を食べた時のことを思い出す。
あの味は、いまでも忘れていない。
彼女と、数少ないものを分け合った日―― けれども、あんなに満たされたことはなかった。
ん?
記憶にひたりかけたカイトだったが、不意に見えた何かで、思考も視線も止めてしまった。
食器ケースの中の、ただ一点。
なぜか、見覚えがあるようなものが入っていたのだ。
しかし、正確にそれが何か言い当てることが出来ずに、ケースを開けると、濡れた手のまま伸ばして掴みだしていた。
これは。
記憶がうまく合致しない。
一体、これが何なのか――
ベッドを車に積み込んで、彼女の部屋に戻ってくる。
手を見ながら。
あのベッドは新品ではなかったのだろう。
金具がサビていて、カイトの手を赤く汚してしまったのだ。
このまま服でも触れば、服も赤くするに違いなかった。
彼は流しに立つ。
服を汚すのがイヤだったワケではない。
だが、服を汚してしまうと、それをメイが一生懸命、手間暇かけて洗うだろう。
それが、イヤだったのだ。
バチャバチャと手を洗う。
何気なく、ちらと横を見ると。
台所周りの片づけを、まだ彼女はしていないようだった。
食器などが、脇のちいさなケースのようなものに入っているのが見える。
透明なカバーなので、中身が分かるのだ。
いくつかの食器が、伏せて置いてあって。
統一性のない茶碗や皿。
ここで、朝食を食べた時のことを思い出す。
あの味は、いまでも忘れていない。
彼女と、数少ないものを分け合った日―― けれども、あんなに満たされたことはなかった。
ん?
記憶にひたりかけたカイトだったが、不意に見えた何かで、思考も視線も止めてしまった。
食器ケースの中の、ただ一点。
なぜか、見覚えがあるようなものが入っていたのだ。
しかし、正確にそれが何か言い当てることが出来ずに、ケースを開けると、濡れた手のまま伸ばして掴みだしていた。
これは。
記憶がうまく合致しない。
一体、これが何なのか――


