冬うらら2


 幸せの後ろにはいつも不幸が立っていて、いつでもすり替わってやるぞと、舌なめずりをしているような気がしていた。

 ほんのちょっとでも、自分が気を抜いた隙に、何もかも壊されてしまうような気がした。

 そんな経験が、メイには二度あったのだ。

 父親が死んで、人生が急変した瞬間と。

 カイトという存在を失って、一人あの家を出ていった瞬間と。

 父親はもう戻らないが、カイトは二度と失わずに済むかもしれない。

 不幸がすぐそこに潜んでいることを忘れずに、自分たちには近寄れないとあきらめて去っていくくらいまで、油断をせずにヒナを育てていければ。

 強く。

 いま、自分がちゃんと幸せの上を踏みしめていることを忘れないように、強く歩いていけば、そのキラキラは捕まえられるはずだった。

 ひどい触れ方をしたら、壊れたり消えたりしてしまうと知り、両手でこぼれ落ちないように、大事にすくい上げるのだ。

「メイと申します。本当にふつつか者ですけれども、どうかよろしくお願い致します」

 精一杯の気持ちを込めて、笑顔で―― でも、言葉は堅苦しい着物を着てしまった。


 糊がききすぎだった。