冬うらら2


「まあまあ、母さん」

 早口の母親に比べて、父親の方の声は穏やかでゆっくりしたものだった。

 系列的に言えば、ハルコと似ている。

 ちゃんと理屈さえ通せば、話が分かる人の声だ。

「とりあえず、名前を教えてもらえるかな? 息子は、私らの娘になる人の名前も教えなかったんでね」

 眼鏡のない少し細められた瞳が、まっすぐにメイを見て。

 そうしたら、がんじがらめだった緊張の糸が、プツンと切れた。

 娘だと。

 そう言ってもらえたからかもしれない。

 自分が、あの父親以外の娘になることを、考えたことはなかった。

 義父や義母であるとか、息子の嫁であるとかいう単語は、何度となく頭の中によぎっていた―― しかし、そのその中に『娘』という言葉は落ちていなかったのである。

 その音はキラキラと輝いて、メイの胸のクッションに落ちたのだ。

 すごく、欲しかった音だった。

 手にしていいのか、少し戸惑う。

 本当に、このキラキラを捕まえてもいいのか。

 逃げないのか。

 怪我をしたりしないのか。

 戸惑いというよりは、怖かったのかもしれない。