冬うらら2


 ガチャガチャと、ベッドがバラバラになっていく音がする。

 気がつくと、彼の方をちらちら見ている自分がいた。

 多分、きっと音のせいだった。

 金属質の音は、骨を震わせるので、ついそっちを見てしまうのだろう。

 そして、ついに彼の長い指が、瞬く間にベッドを、ただの金属のカタマリにしてしまった。

 無言のまま、カイトはその金属を運び出す。

 きっと車に積みに行くつもりなのだ。

 その背中を、またぽけっと眺めてしまった。

 いけない、いけない。

 カイトが、あんなに働いてくれているのに、自分一人トロトロしているワケにはいかなかった。

 早く片づけて、彼を休ませてあげないといけないのだ。

 パタパタとあちこちを駆けずり回っていたメイは、その時は、まだ気づかなかった。

 カイトが、車から戻ってきたのまでは分かっていた。しかし、彼は台所の流しのところに立っていたのだ。

 そして、水を出している。

 どこかで手でも汚してしまったのだろうか。

 水音で気づいたメイは、いま詰めかけた綺麗なタオルをひっぱり出して、彼に持っていこうとした。

 その次の瞬間。

 カイトの濡れた手が、ひょいと何かを掴んだのだ。

 流しのすぐ横の、食器を入れておいたプラスティックのケースの中から。

 何気ない動き。

 喉でも乾いたのかな、とメイが思うくらいの、自然な動きだった。

 が。

 そのカイトの動きが、いきなりビクッと驚いて固まる。

 え?

 メイも、つられて固まった。

 固まったが、視線は彼の手元から離さなかった。

 その手には。

 手には。


 きゃー!!!!!!


 み、見られちゃったー!!!!!


 うっかり。


 メイは、本当にうっかり、その存在のことを忘れてしまっていたのだった。