冬うらら2


「こんな汚いところでごめんなさいね、昨日いきなり電話なんかして来るって言うから、掃除をしている暇もなくって」

 ようやく、彼女はソファに座り。

 話が始められそうな雰囲気が、出来上がりつつある。

 しかし、どういう風に話が進んでいくかなんて、メイには分からなかった。

 ただ、この人たちに気に入られなければ、これからの結婚生活が寂しいものになってしまうということは、はっきり分かっていた。

 息子の嫁とうまくいかない親の話は、いくらでも聞くことが出来るのだから。

 大丈夫。

 カイトの言ったように、普通にさえしていればいいのだ。

 メイは、自分にそう言ってやる。

 でも、全然緊張がほぐれなくて、顔も口もうまく動かせる自信がなかった。

「ところで」

 カイトの父親は、たたんだ新聞を膝の上に乗せていた。

 それを脇の方に置きながら、眼鏡を外す。

 眼鏡を、胸ポケットに納めると、二人の顔を交互に眺めた。

 本格的な話が、始まる合図に違いなかった。

「私の耳がおかしくなければ、昨日カイトは私に、『結婚した』と言ったが…それは、言葉通り受け止めていいのかね?」

 何とも、複雑そうな色をたたえた瞳だ。

 昨日初めて、カイトは両親に報告したのだろう。

 やっぱり、と思ってはいたが、メイは竦み上がってしまった。

 咎められている気がするのは、事後承諾という形になってしまったことに対する後ろめたさのせいだ。

「んなことで、嘘ついてどうすんだ」

 短気な彼の性格は、父親に対しても変わらないようである。

 男親と息子は反発し合うものらしいが、メイはそっちにもハラハラしなければならなかった。

「別に、オレは許可をもらいに来たんじゃねぇ、報告に来ただけだ。ホントは報告も……」

 そこまで言ったカイトが、ぐにゃぐにゃと言葉を濁して黙り込んだ。

 そこから先は、言いたくないことのようだった。

 確かに、報告にも来るつもりはなかったなどとはっきり言えば、たとえ親でも不愉快になるだろう。

 ケンカをしにきたのではないのだと、彼も気づいて踏みとどまったのだろうか。