冬うらら2

□38
 先にって。

 すっかり、恥ずかしくなって逃げたらしいメイに、カイトもつられて赤くなった。

 彼女がいなくなって、この瞬間だけは助かったかもしれない。

 無意識に顔の下半分を、大きな手で押さえる。

 フロに入るぞ―― これが、最大限の彼のアピールだった。

 そのほか、鳥肌の立つ表現なら山積みなのだが、許される範囲の語彙の中では、それがギリギリのものだったのである。

 彼女と一緒に。

 それが実現できたのは、ほんの二度ばかりだ。

 まだ、ロクな会話さえ風呂場では交わしたことはなかったし、彼女の身体を直視出来たこともない。

 ここ数日ずっと忙しくて、やっと同じ夜の時間を共有できた今日。

 昼間、ソウマやハルコに襲撃されたのも、もっと彼女の存在を味わいたいと思わせる原因だった。

 おまけに、明日は厄介なことに、自分の親のところに連れていかなければならないのだ。

 そういうことを考えると、この2人きりの時間というものは、かなり重要なものだった。

 取り残されたカイトは、妙に肩に力を入れたまま、風呂場の方に向かう。

 彼女が、わざわざ後かたづけに行ったのは気に入らないけれども、『先に入って』と言ったのである。

 話の流れから考えると―― きっと、後から入ってくるのだろう。

 前とは逆のパターンだ。

 以前のは、カイトが後から殴り込むという形だったが、今度は。

 カイトは、思考を止めた。

 かなり、先行したところまで勝手に想像しようとしたのである。

 それを振り切って、カイトははやる気持ちを押さえながら、一人で風呂に突入したのだった。

 風呂の中での作法というものは、カイトには何もない。

 面倒くさければシャワーだけだし、湯船につかるとしても順序も何もなかった。

 その時の気分である。

 しかし、今日のカイトはまず身体だの頭だのを洗った。

 メイが入ってきた時に、自分が洗い場にいたら、間抜けなカンジがしたからだ。