冬うらら2


「あっ、あの…違うの…そうじゃないの」

 腕の中で慌てる身体が、何かを伝えようとする。

 しかし、不安に取り憑かれてしまったカイトは、腕を離したりしなかった。

「だ、だって………その…昨日…重かったでしょ?」

 すごく恥ずかしそうに、彼女が小さく言った。

 あぁ?

 一体何を言っているのか。

 重かったって。

 あ!

 そこで、ようやくカイトは配線がつながった。

 昨日の夜、メイを抱き上げてベッドに運んだことを思い出したのだ。

 いや、忘れていたワケではない。

 ちゃんと分かっていたが、今それが改めて話題にされるとは思ってもみなかったのである。

 そして、そんなことが理由で自分が避けられていたなんて。

 つくづく女の考えには追いつけない。

「んなことで…」

 あまりに驚いて手の力を緩めたら、彼女が赤い顔でぱっと見上げてきた。

「だ、だって…私、やせてるワケじゃないし…それに…馬鹿みたいに口開けて寝てなかった?」

 穴があったら入りたい。

 自分の寝姿なるものに、ちっとも自信がないようだった。

 まあ、どんな風に自分が眠っているのかを、知っている人間は少ないだろうが。

 しかし、カイトの意識は違う方向に掴まれていた。

『馬鹿みたいに口…』

 その彼女の表現がおかしくて、カイトは笑いをこらえきれなくなってしまったのだ。

 いきなり、衝動のようにわき上がってきたのを、止められないまま。

 さっきまでの心配が全部吹き飛んで、いきなり安堵してしまった追い風もあったのだろう。

「え?」

 その声で、『は! しまった!』と、カイトは自分の口をかぱっと押さえ笑いを止めた。

 まるで、彼女の言うことを肯定してしまったかのようではないか。

 誤解されて、落ち込まれでもしたらどうするのかと、カイトは何とか、それを防ぐための言葉を探そうとした。

 が。

「あ…止めちゃわないで…もう一回…もう一回笑って」

 彼女は、カイトのパジャマの裾を掴んで―― 既に、論点がズレてしまって。

 ソウマとハルコは、あと10分待たされることになった。