冬うらら2

□36
 頭のスミで。

 腕が、寂しがっているのが分かった。

 眠っていても、その違和感はカイトの中に息づいている。

 本当なら、温かいものが内側に抱き込まれているハズなのに、いまの彼の腕は空っぽだったのだ。

 無意識に、手が動いていた。

 温度が、近くにあるのは分かっていた。

 気配もある。

 視覚に頼らずに補食する動物のように、カイトはそっちの方向へと伸ばした。

 いた!

 本能が、完全にターゲットをロックオンした瞬間、がしっとその身体を抱き寄せていた。

 その温度を味わうより先に―― ゴツッ。

 ゴツ?

 腕の記憶と一致しない感触が、カイトの眉を動かした。

 そして、ついに覚醒したのだ。

 カイトは、おそるおそる目を開けた。

「気持ちは嬉しいんだが、オレも一応、妻子持ちだしな」

 はっはっは、不倫はいかんぞ、不倫は。

 目を開けた瞬間、満面の笑顔で語りかけてきた人間がいた。

 確認するまでもない。

 ソウマだ。


「○×▲★!!??」


 声にならない悲鳴をあげて、カイトはばっと飛び退いた。

 何でソウマが、人のベッドの中にもぐりこんできているのか。