冬うらら2


「オレは、いい」

 そう言った瞬間―― 女二人は、同時にびっくりした顔を向けた。

 驚いてはいるが、二人とも顔には書いてある。

『とんでもない!』と。

「あの…お客様。結婚指輪は、お二人ともはめられるものですが…」

 また、カイトが婚約指輪と勘違いでもしているとでも思っているのだろうか。

 店主の目のどこかには、『こんな客は初めてだ』という文字が映っていた。

 世の中の慣習など、カイトには関係ない。

 彼は、メイに指輪をさせたいのであって、自分のことはどうでもいいのだ。

「それなら…私も、いいです」

 なのに、メイの方はしゅーんとしたまま、信じられないことを言い出した。

 何のために、彼が恥ずかしい思いをしてまで、ここに連れてきたと思っているのか。

「一緒にしないと…意味ないもの」

 んなツラぁ、すんな!

 淋しそうな彼女の顔に、カイトは胸を突き刺された。

 どうして、気持ちはちゃんと伝わらないのか。

 彼が指輪をしないのは、そういう意味じゃないのに。

「お客様…」

 店主は、この夫婦には怪訝と困惑を隠しきれないまま、しかし、プロらしくもう一度、彼に呼びかけた。


 カイトは、左腕を突き出すより他、逃げ場はなかった。