□
彼が、そんなことを知るはずがなかったのである。
だから、妻を誘拐―― という結果になってしまったのだ。
その妻は、驚いたまま指のサイズを計ってもらっている。
じゃらじゃらと、山ほどあるリングをとっかえひっかえ、ぴったり合うサイズを探しているのだ。
カイトは、まるで妻の着替えに同席しているような気分で、そっちを見ないようにしていた。
同時に、『結婚したんだから、結婚指輪を買うのは当たり前だ』というオーラを発して、メイからの制止や疑問の言葉を跳ね飛ばしてもいた。
とは言っても、それにカイトが気づいたのは、ほんの昨日の出来事だったけれども。
チーフとの会話の中に、たった一度だけ出てきたその言葉は、時間差こそあったが、彼の記憶の中にジュッと焼き付けられたのである。
しかし、ソウマたちに言われる前に気づけたという事実が、少しだけカイトを誇らしくさせてもいた。
自分が気がついて、彼女を幸せに出来るのだという充実感と言った方がいいか。
とにかく、メイの指を、自分の実力で飾ることが出来るのだ。
「9号ですね…」
そう女店主が言ったのが、彼の耳にするっと入ってきた。
そうか、9号か。
まだ、空欄だらけのメイファイルに書き加えられた。
果たして、それが活用される時が、くるかどうかは分からないけれども。
「はい、次は旦那様の方の指を…」
そう言われるまで。
カイトは、結婚指輪は男もするものだということを、すかっと忘れ去っていた。
な、な、な…オレもか?
慌てて二人の方を見ると。
店主はにっこりとカイトを見ていて、メイは恥ずかしそうに、自分の左手を握ったようにうつむいていた。
「どうか、なさいました?」
戸惑っているカイトに、怪訝の声。
そうなのだ。
昨日チーフも言っていたではないか。
指輪をしていないカイトだから、どっちなのか分からない、と。
オレも…。
自分が、指輪をしているところなど想像出来ず、逆にしようとして具合が悪くなってしまった。
彼が、そんなことを知るはずがなかったのである。
だから、妻を誘拐―― という結果になってしまったのだ。
その妻は、驚いたまま指のサイズを計ってもらっている。
じゃらじゃらと、山ほどあるリングをとっかえひっかえ、ぴったり合うサイズを探しているのだ。
カイトは、まるで妻の着替えに同席しているような気分で、そっちを見ないようにしていた。
同時に、『結婚したんだから、結婚指輪を買うのは当たり前だ』というオーラを発して、メイからの制止や疑問の言葉を跳ね飛ばしてもいた。
とは言っても、それにカイトが気づいたのは、ほんの昨日の出来事だったけれども。
チーフとの会話の中に、たった一度だけ出てきたその言葉は、時間差こそあったが、彼の記憶の中にジュッと焼き付けられたのである。
しかし、ソウマたちに言われる前に気づけたという事実が、少しだけカイトを誇らしくさせてもいた。
自分が気がついて、彼女を幸せに出来るのだという充実感と言った方がいいか。
とにかく、メイの指を、自分の実力で飾ることが出来るのだ。
「9号ですね…」
そう女店主が言ったのが、彼の耳にするっと入ってきた。
そうか、9号か。
まだ、空欄だらけのメイファイルに書き加えられた。
果たして、それが活用される時が、くるかどうかは分からないけれども。
「はい、次は旦那様の方の指を…」
そう言われるまで。
カイトは、結婚指輪は男もするものだということを、すかっと忘れ去っていた。
な、な、な…オレもか?
慌てて二人の方を見ると。
店主はにっこりとカイトを見ていて、メイは恥ずかしそうに、自分の左手を握ったようにうつむいていた。
「どうか、なさいました?」
戸惑っているカイトに、怪訝の声。
そうなのだ。
昨日チーフも言っていたではないか。
指輪をしていないカイトだから、どっちなのか分からない、と。
オレも…。
自分が、指輪をしているところなど想像出来ず、逆にしようとして具合が悪くなってしまった。


