夕焼けに染まるワイシャツ

逞しい手足 背中

自転車を押す 貴方の横顔




幾通りも考えて

幾度も繰り返した

勇敢な『頭の中の私』なら

こんな絶好のチャンスを逃しはしない




胸の鼓動だけを聞きながら

並んで帰る いつもの下校風景





タイミングを見計らうフリをしながら

結末を先送りにして

たった一つの言葉は

体中を駆け巡る






(あのさ。ちょっといいかな…………。)




切り出すセリフは決めてある

欠けているのは勇気




口にしたら もう

心地よくも物足りない

生温い関係には

戻れない





………





私は今

始まりも終わりもしなかった恋に

別れを告げる












「あのさ。ちょっといいかな。」