「このままちょっと聞いてくれるか?」
「うん」
混乱していたあたしは、黙って舜の話を聞くことにした。
「俺さ、学生時代は周りがみんなうちのこと知ってたから、どうしてもそういう目で見られててさ、それが嫌でしょうがなかった。
で、誰もうちのことを知らない世界に行きたくて、親父のコネのない、今の会社に実力で入った。
入社してすぐの合宿研修で同期の奴らと仲良くなって、みんながうち関係なく俺とダチになってくれたのがすげえ嬉しかった。
で、ある日合宿所の夕飯をすごいうまそうに食べてる子を見つけて、その子に一目惚れした。
その子にもうちのことは知らせないで、俺個人を好きになってほしいと思ってアプローチしてみたんだけど、その子は年上の上司ばっか見てて、どうやら上司の奴もその子に手出ししてきたみたいだからさ、
もう、親の金でもなんでも使っていかないと上司にさらわれちまうって焦ってさ……」


