あたしはそっと水野さんを見た。
水野さんは複雑な表情であたしを見つめていた。
悔しいような、切ないような……
きっと、本郷部長の前じゃあたしをかばうことはできなくて、でもあたしを慰めてくれようとしているのが優しくあたしを見つめる目から窺い知れた。
水野さんは、そのままずっとあたしの両手を覆うように握っていてくれた。
あたたかい……
水野さんの手から伝わる温かさが、固くなった心をほぐしてくれるようだった。
あたしが気持ちを落ち着けている間、ママさんはずっと本郷部長に話しかけていた。
穏やかな口調でママさんに話しかけられ、本郷部長もだいぶ大人しくなったようだった。
そこへバーテンダーがフルーツの盛り合わせを持ってきた。
「私のおごりよ、どうぞ召し上がれ」
ママさんは本郷部長の口の前にピックに刺したメロンを差し出したが、部長はそれを押しやった。


