凍りついた空気を破ったのは、本郷部長の不機嫌な声だった。
「なにも生娘じゃあるまいし、そんなに嫌がらなくたっていいだろう」
な、なに逆ギレしてんのよ!
もう限界。
「あ、あたし、失礼します!」
大前さんと水野さんがハラハラした顔で間に入ろうとしてるのがわかったけど、もう我慢できなかった。
あたしはソファの上に置いたバッグに手を伸ばした。
すると、その手を本郷部長につかまれた。
「座れ!」
はあ?冗談でしょ。
あたしはその手を振り払った。
「離して下さい」
すると、本郷部長が声を荒げた。
「おい、俺が座れと言ってるのが、わからんのかっ。
俺はおまえの会社の得意先の部長だぞ!」


