「泣かないで」 水野さん…… 嬉しい。 追いかけてきてくれて、抱き寄せてくれて。 でも。 でも、今のあたしには、水野さんにあわせる顔がない。 あたしは水野さんの胸を押し返した。 「ごめんなさい。 あたし、帰ります」 「かりんちゃん…… どこか落ち着けるところで少し話さないか?」 「いえ、今日は本当に帰ります。 失礼します!」 あたしは水野さんの目を見ずにそう答え、返事を待たずに駅へ向かって走った。