4月に入って満開に咲いた桜を、雨が散らしていたある日の夕方。

定時にあがったあたしと舜は、一緒にエレベーターホールに向かって歩いていた。


「最近毎日、田所さんから電話攻撃だぜ。
もう勘弁してくれって感じ」

「そうなんだ……」

「なあ、何で俺が起業したがってるなんて、田所さんに教えたんだよ。
あの人勝手に盛り上がって、私が秘書をやってあげるぅ、なんて、余計なお世話だっつーの」

「ハハハ……ごめんね。
そんなことになるとは思ってなくて」

「参ったよ」


田所さん、あれからかなり積極的に舜にアプローチしているみたい。

悪い人じゃないと思うんだけど、舜は相変わらず苦手みたい。

舜に悪いことしちゃったかな。


「本当にごめんね」

「まあ、かりんのせいじゃないんだけどさ……」